研究概要 |
本研究では,気相輸送法による熱電素子の傾斜機能材料の形成に関する基礎的な検討を行なった.気相輸送法は,高温部で蒸発させた元素を気相状態で拡散させ,低温部で析出させる方法である.得られた物質は,純度が高いという特徴をもつ. 実験方法は,6-N(99.9999%)の高純度のPbおよびTeを化学量論組成に秤量し,それにn型ドーパントとして0.50mass%の2-NのPbI_2を添加したもの(以後Gと称す),および0.10mass%の2-NのPbI_2を添加したもの(以後Sと称す)を作製し,それぞれ石英管に真空封入した.それらの石英管内の試料を一旦溶融・攪拌・凝固し,出発原料を得た. まず予備検討として,それぞれの出発原料を粉砕し石英管に封入した.出発原料を石英管の一端に集め,1145K,S側を1083Kとして200時間保持し,気相からの単結晶育成を試みた. 次に,その出発原料を粉砕し,再びGを結晶育成側に,Sを出発原料側にして石英管に真空封入し,G側を1145K,S側を1083Kとして200時間保持し,キャリア濃度勾配を持つ結晶を2段階法により気相から育成した. その結果,予備検討では,単結晶を育成することができた.この場合,結晶は気相となった出発原料の一部が1113〜1083Kの個所に一旦析出し,その後さらに他端の育成部に再輸送されるというメカニズムであることが明らかになった.さらに,2段階育成ではSがGに対して連続的に成長することが確認され,FGM化への適用の可能性が示された. 熱電素子の作製では,電極の形成技術も重要である.この技術の検討の結果,Bi-Ag合金ろう材が優れていることが明らかとなった.
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