研究概要 |
環境から浸透した水素に起因する金属間化合物の脆化現象におよぼす粒界上での構造と組成ならびに結晶粒径,第2相の存在等の組織因子の影響と機構について,主としてNi_3(Si,Ti)とCo_3Tiの金属間化合物を用いて研究を行い以下のような結果を得た. 1.Ni_3(Si,Ti)の大気中での水分による脆化とこの合金の粒界上での原子組成との相関をAuger分光分析により解析した結果,そこでのボロン元素や構成元素濃度に直接依存していることを見い出した.水分子の分解あるいは水素原子移動/凝集のkineticsと粒界組成が密接に関連していることが明らかにされた. 2.Nbを含む第2相分散物がNi_3(Si,Ti)合金を強化しつつも著しく環境脆化を抑制することを見い出した.第2相が特有な組織(形状,寸法,組成)を有する時,水素が第2相内部もしくは界面に,あるいはまた変形中に第2相分散物周囲に形成する塑性領域にトラップもしくはscavengingするために生じている考えを提唱した.本知見に基づき,低温高靭性と高温高強度を併せ持つ耐環境性に優れた新規の高温構造材料の開発を可能にすることができた. 3.Co_3Tiの微細粒組織が環境脆化感受性を著しく低下させることを観察した.また,極めて遅い変形速度域になると環境脆化が再び低減する現象を観察した.この機構として,超低速域では合金表面に生じる酸化膜が水素原子浸透を抑制するためとの考えを提唱した.
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