研究概要 |
今年度はMn-Znフェライト,Ni-Znフェライトとその複合材料の高周波非線形透磁率とその磁場による制御に関して周波数を10GHzまで拡張して検討を行った。 (1)Ni-Znフェライトは数100kHz以上で透磁率の周波数分散を起こし,磁壁共鳴を主成分とする共鳴型の分散スペクトルをもつ。複合化すると,100MHz以上に共鳴周波数(磁壁,及びスピン共鳴)がシフトし,緩和型の分散に近づく。焼結体の透磁率スペクトルは,磁場により変化し,緩和型の分散になる。これは、外部磁場により磁壁が消失し,フェライトで一般的に見られる緩和型のスピン共鳴が残るためである。さらに磁場を強くすると,フェリ磁性共鳴による共鳴型のスペクトルになると考えられる。 (2)Ni-Znフェライトは,焼結体では,数MHz以上で分散を起こし,高周波の分散は自然共鳴による緩和型のスピン共鳴を示し,複合化するとこの傾向が顕著になる。分散を起こす周波数はフェライト濃度が下がると,GHz領域までのびる。磁場による効果では,焼結体は磁壁共鳴のスペクトルと,スピン共鳴のスペクトルが磁場により分離され,1kOe程度の磁場で数1GHz近傍に共鳴型の分散が見られるようになる。 (3)電磁波のパラメトリック増幅によるフェラントアンテナの検討では,2つのストリップ線路をフェライトで結合して,外部磁場を印加し,共鳴周波数近傍での磁場による電磁波の透過特性を評価した結果,電磁波の透過特性が変化する事を確認したが,高調波成分の増幅は見られなかった.そこで,2つの共振器でフェライトを介してポンピングと入力の電磁波を結合する構成を提案した。結果については現在検討中であり,今後別の形(論文等)で報告する予定である。
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