研究概要 |
高強度球状黒鉛鋳鉄の水及び水蒸気環境下における「水脆化」現象を検討して,次の結果が得られた. 1.引張試験結果 水による脆化現象は,フェライト球状黒鉛鋳鉄を除いた高強度球状黒鉛鋳鉄(パーライト,マルテンサイト,オーステンパ球状黒鉛鋳鉄)で顕著であった.水付着状態で塑性変形した後に水素分析を行った結果,水素量の増加が確認され,この脆化は水素脆性に起因すると考えられる. 大気中の水蒸気雰囲気における引張特性は次の結果が得られた. (1)真空中において,高い引張強さと伸びを示し,乾燥状態(湿度0%)の大気中より引張特性は向上する. (2)水蒸気圧の上昇に伴い引張特性は低下するが,その低下量は水付着状態に比べ小さい. (3)水付着状態と同程度の脆化が発生する臨界水蒸気圧の存在は認められない. 乾燥水素ガス及び湿潤水素ガス(湿度95%以上)雰囲気における引張特性は次の結果が得られた. (1)いずれの雰囲気においても大きな脆化を生じるが,湿潤水素ガスの方が顕著な脆化を生じる. (2)ひずみ速度の脆化への影響は小さい. (3)脆化が発生す雰囲気中における臨界暴露時間がある. (4)湿潤水素ガス中の水蒸気による大きな脆化現象は鋳鉄中の黒鉛が影響している.
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