研究概要 |
今までの研究成果である薄板溶接構造物の座屈変形が固有ひずみ分布により系統化されたのを受けて,溶接構造物の高度工作精度管理を決定する固有ひずみ分布を"溶接施工条件から導かれるパラメータで系統かできる"ことを,突合せ継手を研究対象として研究した.実験はレーザ溶接とTIG溶接で行った.試験片は開先形状をI型にした突合せ継手と平板であり,一パス一層の溶接を行って,板厚方向の固有ひずみ分布が一様になるようにした.そして,試験片を溶接継手から切り出し,固有ひずみ分布を筆者が提案した逐次層除去法により求めた.実験条件は筆者が導いたパラメータの有効性を確認するために板幅,溶接入熱を変化して行った.また,得られた固有ひずみ分布の正しさを検証するために板に存在する残留応力の測定を行った.得られた研究成果を記述すると (1)ビードオンプレート溶接と突合せ継手に生じる固有ひずみ分布は同じに取り扱える. (2)平均温度上昇のパラメータを同一にすれば高度工作精度を可能にするレーザ溶接により生じる固有ひずみ分布は従来の溶接法の代表であるTIG溶接で生じる固有ひずみ分布と同じになる. (3)平均温度上昇のパラメータ値が同じであれば,溶接施工条件や板幅が異なる試験片の固有ひずみ分布が系統かできる.そして,平均温度上昇から固有ひずみ分布を求める図を完成させた. (4)板の切断工程が高度工作精度に重要であることを突き止め,切断工程の研究を行った.最初に,切断により残存される熱量(残存熱量と呼ぶ)の定量化が必要となり,レーザ切断,プラズマ切断による入熱と固有ひずみ分布の研究を開始し,残存熱量の定量化を行った. 今後,切断過程での固有ひずみ分布の定量化を行い,切断変形を推定する手法を完成させる.
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