研究概要 |
これまでに多孔質材料に対して提案されているGursonの塑性構成式,そのTvergaardによる修正構成式,呉屋・長岐・Sowerbyにより提案された塑性構成式(以下,GNS構成式)および,そのステレオロジー理論に基づく修正構成式の四種類の構成式を用いて,有限要素法プログラムを開発し,数値解析的および実験的に比較検討を行った.実験においては,銅球を母材とする多孔質材をスパーク・プラズマ焼結法により数種類の空孔率をもつ試験片を作成した後,引張試験および硬さ試験を行った.数値解析の結果,Gursonの構成式を用いた数値結果が最も硬めの硬めの応答を示しており,GNS構成式が逆に最も柔らかい応答を示した.実験との比較においては,Tvergaardの修正構成式およびステレオロジー理論に基づく構成式による数値結果が,実験との結果と一致する傾向を示した.さらに,充填金属粉末を用いた抵抗溶接法によって得られる多孔質材料について,その強度評価を行った.抵抗溶接法は,被供試材間に金属粉末を充填し,一定加圧のもと,通電した場合に最も抵抗値の大きな充填金属粉末部から局所的に発生するジュール熱を利用して,溶融温度の異なる被供試材の接合を行うものである.被供試材間に充填される金属粉末部において,使用する金属粉末材料によっては,溶融するのに十分なジュール熱の発生が得られない場合があり,その場合,粉末間の気泡が合体成長し多孔質材となることがしばしば確認されている.供試材にアルミニウムを,充填金属粉末にニッケル粉末を用いた場合,単軸引張試験を行った結果については,破断は,接合部ではなく,アルミニウム棒から生じており,強度の上昇がみられた.この時の接合部の観察においては,割れや空孔などの溶接欠陥は確認することはできず,良好な接合条件であったといえる.アルミニウム棒と銅棒間にアルミニウム粉末とニッケル粉末の混合粉末を用いた場合,破断は,アルミニウム棒から生じており,接合部は,前述と同様の観察結果を得た.また,硬度試験において,接合部は,銅およびアルミニウムに比べ高く,供試材は焼鈍を受けた材料と同程度の硬度を示したことから,接合部周辺は,ジュール熱発生による熱影響を少なからずも受けていることが確認された.
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