研究概要 |
多くの機能性材料は微粒子から作られ,その微粒子が分散して始めてその機能を発現することが多い。しかし凝集力が著しく強いため,微粒子の分散・安定化手法の検討が模索されている。本研究では,高度に分散させると,触媒,非線形光学材料,あるいは表面増強ラマン散乱による分析に応用できると期待されている金超微粒子を取り上げ,金コロイドの固定化手法の開発を検討し,次のような成果を得た。 1.ゲル体を用いた固定化手法を主に検討した。無機ゲルとなる粘土(合成スメクタイト)を主に取り上げた。合成スメクタイト粒子が分散した水溶液中でも,金微粒子を調製することができた。この分散液は次第にゲル化し,金微粒子を分散させたまま固定化することができた。このゲルは乾燥させて膜にすることができ,膜構造は乾燥方法で制御できることが分かった。 2.無機ゲルでの表面電荷の分散・固定化への影響を明らかにするため,負電荷を持つシリカゾルや,正電荷を持つアルミナゾルおよびチタニアゾルの無機微粒子が共存した系で実験した。しかしシリカゾルではその濃度依存性は全く見られなかった。正電荷系では,ゾルへの金イオンの吸着現象が観察された。共存ゾル濃度が薄いと金コロイド径は大きく,また三角形や六角形の形状が見られると共に,急速に凝集した。しかし共存ゾルが高濃度になると,金コロイド径は小さくなり,かつ安定な分散系となった。 3.また比較のためにイオン性高分子水溶液中でも金コロイドを作成した。正に帯電しているポリ2ビニルピリジンでは,金イオンを吸着し,金コロイドの生成を阻害する。一方,負に帯電しているポリアクリル酸ナトリウムでは,生成した金コロイドに吸着し,保護コロイドとなるため,高分子の平均分子量と濃度を変えることで10mmから55mm径の金コロイドを得ることができた。 4.粒子径を制御し,高度に分散した金コロイドを作成するには,合成スメクタイト粒子あるいはポリアクリル酸ナトリウムを共存した系で反応を行えばよいことが判った。
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