研究概要 |
硫酸イオン等の酸性物質及びリン酸やアンモニウムイオンを含む水溶液を用い,それらの液から球状水を生成し,氷中のそれら塩の取り込み現象を検討し,次の結論を得た。 1.不純物としてリン酸とアンモニウムイオンを含む溶液を凍結し球状氷を生成し,融解した結果,融解方法により多くの不純物(塩)が濃縮されると推定された。氷生成が遅いほど,溶液中のイオン濃度(C_0)が低いほど,高い濃度比(C/C_0)の流出液が得られた。この取り込み現象は,雪に含まれる硫酸,硝酸,塩化物イオン等の酸性物質の取り込み現象とほぼ同じであった。 2.リン酸又はアンモニウムを含む溶液から直径7cmの球状氷を生成し,氷の一端から順にスライスし,スライス氷を溶解し,球状氷中でのそれらの濃度分布を求めた。その結果,中心付近に濃度の高いピークの存在が認められた。このピークの存在は,上述の融解時の流出中の濃度変化と一見矛盾する。その矛盾を説明するために,凝固点降下による中心付近の早い融解,その溶解液がしみ出るため氷中のcracksの存在等が考えられるが,まだ実証するまでには至ってない。 3.0〜0.5℃の溶液を用い,純水で生成した球状氷へリン酸とアンモニウムイオンを吸着させたところ,約10秒後に最大吸着量を示すピークが見られた。アンモニウムイオンよりもリン酸イオンの吸着量が多く,比較的大きな選択性が認められた。0〜0.5℃の範囲で両イオンは吸着した。吸着等温線はラングミュア型と考えられる。 さらに,球状氷中へのリン酸やアンモニウムイオンの取り込み現象を説明するために,球状氷の成長速度と吸着速度から取り込まれた塩の分布を推定するモデルの構築を引き続き検討中である。
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