研究概要 |
天然高分子であるアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンのゲル化反応を利用し,コロイド粒子をゲル内に包括させ懸濁系から除去する新規な難処理懸濁質分離プロセスについて検討を加えた。本研究で得られた結果は以下のとおりである。 1.アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液に滴下し,球状ゲルを生成させた。ゲル化に要する時間は,液滴の直径の二乗に比例する。従って,迅速なゲル化のためには,アルギン酸液滴の直径をできるだけ小さくする必要があることが明らかとなった。 2.コロイド粒子としてナトリウム型ベントナイトを用い,これとアルギン酸ナトリウム水溶液の混合液を塩化カルシウム水溶液に滴下し,コロイド包括ゲルを調製した。ゲル中にベントナイト粒子が包括されている場合,ナトリウムベントナイトの層間にあるナトリウムイオンがカルシウムイオンと交換され,ゲル中のベントナイトは全てカルシウム型に変わっていることが明らかとなった。 3.ベントナイト包括アルギン酸ゲルの圧搾速度は,カルシウムベントナイトの圧搾速度とベントナイト未包括のアルギン酸カルシウムゲルの中間に位置し,ゲル中のアルギン酸の割合が小さいほどカルシウムベントナイトの値に近づく傾向を示した。アルギン酸の組成が増えるとともに圧搾速度が低下するのは,アルギン酸の保水性によるものと考えられる。 4.泥水シールド工法におけるベントナイト泥水安定剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)が本手法に与える影響について検討した。ゲルが生成するか否か,およびゲルの形態は,液滴中のアルギン酸濃度のみで定まり,液滴に含まれるCMCの濃度には無関係であることが分かった。圧搾速度は,ゲル中のCMCの割合が多いほど低下した。従って,迅速な泥水の処理のためには,CMCの使用をできるだけ少なくすることが望ましい。搾液の粘度は,水の粘度と同じであったため,圧搾速度の低下は,CMCの保水力に起因するものと考えられる。
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