研究概要 |
酵素蛋白質の熱安定化におけるサブニット間相互作用の寄与を明らかにすることを目的として、無機ピロフォスファターゼ(PPase)をモデルタンパク質として研究を行った。本件研究では以下のことを明らかにした。 (1)好熱性細菌PS-3PPaseのHis-118,His-125は、両残基とも3量体・3量体接触ドメインの結合部位である。Trp-143は3量体・3量体接触ドメインの立体配置の保持と酵素全体の構造を維持するのに重要である。 (2)枯草菌PPaseは、一次構造と酵素学的特徴から、全く新しいタイプのPPaseである。 (3)好熱性細菌Bacillus stearothermophillus由来のPPaseの一次構造は、C末端が2残基短いだけでPS-3酵素のPPaseの一次構造と全く同じであった。Tyr-46とTyr-140は活性中心の構造維持に重要であると推定された。 (4)PS-3 PPase中のプロリン10残基は、(1)高次構造維持に関係ないもの(P39,P69)。(2)二次構造には関係ないが4次構造維持に重要なもの(P14,P43,P69,P116)(3)高次構造維持に重要なもの(P72A,P100A,P104A,P142A)に大別できる。 (5)PS-3 PPaseの89番目はセリン残基では構造維持に重要であるが、グルタミン酸、アスパラギン酸に変異させると、さらに熱安定性は上昇する。 (6)PS-3 PPaseのArg-129をヒスチジンに変異させた変異酵素は6量体として存在し、その熱安定性も増加した。
|