研究概要 |
大気中の粒子状・ガス状物質及び雨水の重要な特徴を効率的に把握でき、相互の関連を調べられる総合的分析評価システムを研究した。フィルター上に10μm以下と2.5μm以下に分級捕集した甲府市の大気浮遊粒子状物質では、平均75%が健康影響が大きい微小粒子で、その年平均値は米国の新基準を上回った。捕集試料と抽出残留物は蛍光X線法とX線回折法により、有機溶媒・水・0.1M塩酸による逐次抽出物はICP発光法、イオンクロマトグラフィーなどで効果的に分析できた。水溶性成分は試料中の40〜90%を占め、その60%以上が微小粒子であった。S,Cl,Zn,Br,Pbは微小粒子中に偏在し、V,Cu,Kも微小粒子中に多く、人為起源が推定され、特に、Cu,Zn,Br,Pbは自動車の高い寄与が示唆された。SとVは夏季に、その他は晩秋から初冬に高値を示した。冬季高濃度時のC1は主にNH_4Cl、Sは主に(NH_4)_2SO_4等の二次生成粒子であった。雨水は大気中の粒子状・ガス状物質と相互作用しつつ降下するので、大気環境の評価に適し、その成分の存在形態は生体への取り込まれ方を左右することから、濾過・限外濾過によるサイズ別分離と接触定量法とを組み合わせ、雨水中のFeやMoなどの存在状態研究法を開発した。初期雨水では低分子量の反応活性なFeは5〜20%のみで、0.45μm以上の粒子状が多く、酸化物や珪酸塩のような酸不溶性不活性形が多いものの、不活性だが酸可溶性のFe(OH)_3のほか、活性なフミン酸錯体が数%程度含まれた。初期雨水中のMoは、低分子量の活性形の他に粒子状でも含まれ、これはFeに取り込まれて不活性となるが、フミン酸共存で活性になった。また、雨水と粒子状・ガス状物質を平行採取して相互の関連性を検討できた。さらに、現場に持ち運べる簡易分析装置として、半導体光源を用いた小型の7波長同時測定吸光光度計、マルチチャンネル分光高度計、光音響分析装置などを試作し、亜硝酸イオンや鉄などの定量を例として、その有用性を実証した。
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