研究概要 |
親水性ブロックと疎水性ブロックからなるポリ[(N-アシルイミノ)エチレン]を骨格とする両親媒性ブロック共重合体は,水中で直径が100nm程度の集合体を形成する。この高分子集合体をキャピラリー電気泳動の泳動液中に添加し,少量のSDS等アニオン性界面活性剤を添加して集合体表面に負電荷を供給すると,集合体は疑似固定相として機能することを見いだした(AG-CE)。すなわち,フェノール類のような中性物質が,主にその親油性の順番に泳動された。このAG-CEの選択性は,従来からあるSDSミセル等を用いるミセル動電クロマトグラフィー(SDS-MEKC)と比較すると,ジニトロフェノール類のようなアニオン種の泳動が特に遅くなった。アニオン種は,AG中にもSDSミセル中にもほとんど取り込まれない。AGはSDSミセルに比べて負電荷密度が小さく,SDSミセル中に取り込まれた中性物質は大きく泳動が遅れるが,AG中に取り込まれたものはそれほど遅れないと考えられる。このため,SDS-MEKCと異なり,AG-CEではアニオン種はAG中に取り込まれる中性物質より泳動が遅くなると考えられる。 また,高分子集合体を逆相クロマトグラフィーの移動相に添加し,新しいタイプのミセルクロマトグラフィーを検討した(AG-LC)。ナフタレンスルホン酸類の分離について,AG-LCは通常の低分子ミセルを用いるミセルクロマトグラフィーとはかなり異なる分離選択性を示した。 今後,両親媒性ブロック共重合体の分子修飾によりさらに新しい分子認識能力を発現させることができれば,キャピラリー電気泳動や関連するクロマトグラフィー分野への応用が期待される。
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