研究概要 |
各構成原子を原子レベルで均一に混合できるクエン酸錯体法を応用し,クエン酸錯体合成時にAu細線を導入しておき,LiM_xO_y(M=Mn,Ni,Co)薄膜の合成(クエン酸錯体浸漬法)を行った。溶融炭酸塩法ではLiCoO_2しか合成できなかったが,クエン酸錯体浸漬法ではLiCoO_2,LiMn_2O_4,LiNiO_2の薄膜をAu電極上に合成することができた。そのリチウム挿入/脱離特性はLiCoO_2,LiNiO_2の場合はリチウム脱離は容易に進行するが,リチウム挿入は困難であった。一方,LiMn_2O_4の場合は1V/sという高速掃引でも十分な電流応答を示し,サイクル特性にも優れていた。これは,1O秒程度で理論容量全てを反応させることが可能だということで,現在の電池技術の常識を覆す驚くべき結果である。しかし,同じクエン酸錯体から合成したLiMn_2O_4を用いてコンポジット電極を作成した場合,0.01mV/sの掃引速度でなければ可逆なピークは得られない。すなわち,導電助材として炭素は活物質に対する導電助材として機能しているのではなく,Al集電体表面に生成している不動態皮膜に対して伝導性を発現していると考えられる。活物質の光応答に関しては,光チョッパーを用いて光電流の測定を試みたが,明解な光応答が得られなかった。 この結果を受け,リチウム電池正極の特性を支配しているのはAl集電体とその表面に生成している不動態皮膜,ならびに炭素導電助材との接触界面にあると考えられる。そこで,Al集電体表面の不動態皮膜について検討を行ったところ,AlF_3と思われるバリア型の皮膜が生成しており,その生成機構は水溶液中でのAl陽極酸化皮膜の生成と同様であることが分かった。この不動態皮膜の特性によって,充放電速度ばかりでなく,充放電容量まで影響を受けることが分かった。
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