研究概要 |
誘電率の非常に高いシドノン化合物に注目し,リチウム二次電池用電解液の溶媒としての利用可能性を検討した.本研究においては,シドノン化合物の中でも特に誘電率の高い3-メチルシドノン(3-MSD)及び3-エチルシドノン(3-ESD)を合成し,主として種々エステル系溶媒との二成分混合溶媒電解液に関するリチウム極の充放電特性をサイクル効率から検討したところ,既に報告した3-プロピルシドノン(3-PSD)や,3-イソプロピルシドノン(3-i-PSD)と比較してその効率は非常に低く,3-MSDや3-ESDを含む二成分系混合電解液はリチウム二次電池用として実用性に乏しいことが分かった.そこで3-MSDや3-ESDを含む三成分混合溶媒電解液の電気化学特性並びに充放電特性を検討した.その結果,LiClO_4,LiBF_4,LiCF_3SO_3及びLiN(CF_3SO_2)_2を含むエチレンカーボネート(EC)をベースとするジメチルカーボネート(DMC),エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)の等モル二成分混合溶媒への3-MSD,3-ESDの添加(モル比1:1:0.1)はリチウム極のサイクル効率の向上に有効であった.この事実を背景にNi電極(Working)上に生成する皮膜の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)により検討したところ,3-MSDや3-ESDの添加効果の見られた系では析出物の粒径が揃っており,かつ均一であった.また,3-MSDや3-ESDの添加効果は観測されないが,高いサイクル効率を示したLiPF_6含有系では皮膜の厚さがかなり薄いことも分かった.一方,3-MSDや3-ESDの添加効果の認められる系について,X線光電子分光法(XPS)を用いて皮膜の組成を検討すると,Nに起因するピークが観測された.したがって,Nを含む析出物が皮膜中に生成することもサイクル効率の大小に影響を及ぼすと考えられる.
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