研究概要 |
オルトリン酸塩は,興味深い光学物性や電気物性をもち,生体材料としても注目されている。フラックス法を用いて,オルトリン酸塩単結晶の育成を試みた。溶質とフラックスの混合物を1050または1100℃まで加熱した高温溶液を5℃/hの速度で徐冷した。生成した結晶を評価した。以下の結果を得た。 1.1050℃の高温溶液を徐冷して,オルトリン酸ストロンチウムカリウム[KSrPO_4]結晶をモリブデン酸カリウム[K_2M_0O_4]フラックスから育成した。最大3.6mmで無色透明の結晶が生成した。結晶育成の最適溶質濃度は,5mol%であった。結晶は,低温形(斜方晶系)に属し,平坦な{010},{110}および{011}面で囲まれていた。結晶中に不純物は検出できなかった。結晶を加熱すると,1060℃で高温形に転移した。フラックスに対する結晶の溶解度も測定した。 2.1100℃の高温溶液を徐冷して,オルトリン酸塩の一種であるストロンチウム塩素アパタイト[Sr_5Cl(PO_4)_3]結晶を塩化ナトリウム[NaCl]フラックスから育成した。無色透明で六角柱状(最長8.6mm)および針状(最長2.8mm)の結晶が生成した。結晶育成の最適溶質濃度は0.2mol%であった。結晶の伸長方向は,〈0001〉であった。結晶中に不純物は検出できなかった。1100℃における溶質の溶解度は,0.25mol%であった。 3.1100℃の高温溶液を徐冷して,オルトリン酸塩の一種であるバリウム塩素アパタイト[Ba_5Cl(PO_4)_3]結晶をNaClフラックスから育成した。無色透明で六角柱状(最長12mm)および針状(最長4mm)の結晶が生成した。結晶育成の最適溶質濃度は1.2mol%であった。結晶の伸長方向は,〈0001〉であった。結晶の品質は,高かった。1100℃における溶質の溶解度は,1.9mol%であった。 4.Li_<0.7>Na_<0.3>PbPO_4組成の高温溶液(1100℃)を徐冷して,オルトリン酸塩の一種であるNaPb_4(PO_4)_3結晶を育成した。最大結晶の大きさは,0.3mmであった。結晶構造解析の結果,この結晶は六方晶系に属するアパタイト型構造をもつことがわかった。
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