研究概要 |
1.計画に基づく、期待された成果:フェノール性エノラートとα,β-不飽和カルボニル化合物型水系反応によるベンゾピラン類の合成 2',4'-ジヒドロキシアセトフェノンとメタアクロレインを、含水メタノール中、塩化カルシウム/水酸化カリウム触媒で処理することにより、1,4-付加反応と、それに続く環化反応をワンポットで達成することに成功し、6-アセチル-2,5-ジヒドロキシ-3-メチル-2H-ベンゾピランを収率63%で得ることができた。一方、β-位が立体的に込み合っている3-メチル-2-ブテナールの場合、2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル(1)と含水メタノール中、塩化カルシウム/トリエチルアミンで処理することにより、収率69%、選択率62%で、1,2-付加反応と、それに続く環化反応をワンポットで達成することに成功し、2,2-ジメチル-5-ヒドロキシ-2H-ベンゾピラン-6-カルボン酸メチル(抗菌性天然物のエステル)を得ることができた。 また、ターゲットとしているフラン環型化合物の光学異性体の分析方法について、光学活性なシフト剤を用いた^1H NMR分析により達成できることがわかり、日本化学会欧文誌に発表した。シフト剤、サンプルの濃度・比率とシグナルの分離度に関する成果は、今後の分析条件の設定に有益な知見となった。 2.予想に反した新規な発見:フェノール性エノラートと1,2-ジカルボニル化合物との水系反応によるワンポット2-ヒドロキシアシル化 グリオキサールと1とを水中、水酸化カリウム触媒で処理した場合、付加反応と、それに続く環化反応をワンポツトで達成することに成功し、2,3-ジヒドロ-2,3,4-トリヒドロキシベンゾフラン-6-カルボン酸メチルを収率77%で得ることができた。 しかし、上記反応を水/メタノール1/15中で行うと、予想外にワンポットで2-ヒドロキシアセチル化が進行し、2,4-ジヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシアセチル)安息香酸メチルが収率40%で得られることを見出した。 3.予想以上の新規な成果:フェノール性エノラートの反応を利用した高分子の修飾 上記の水/メタノール系の反応は、当初予想していなかった地元企業との連携による機能性コーティング剤の開発に発展し、特許一件の出願と二件目の準備につながった。
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