研究概要 |
コロイドスラスタの加速原理に基づきデブリシミュレータの設計を行い、試作機を製作して実験を実施した。シミュレータの構成は、タングステン線の一次電子源ヒータ、ステンレス製の電極3枚(電子加速用2枚、帯電粒子加速用1枚)及び電極間の絶縁材であるマコールである。加速粒子は直径50,100,500μmの炭素粒子を使用した。初年度は今回初めての試みということもあり、設計上の問題点が明らかになり、粒子加速には至らなかった。この問題点をもとに、昨年度は、シミュレータを改良して二次試作機を作製し、さらに真空槽にガラス容器を接続し、そこにこのシミュレータを取り付け、シミュレータの作動状況を視覚的に観察できるようにした。また、炭素粒子供給装置についてはピエゾ素子を用いた装置を新たに設計製作した。今年度は、この二次試作機を使った実験を実施した。その結果、炭素粒子の加速が可能になり、その加速のようすを確認することができた。この方式での大型固体粒子のイオン化、加速は前例がなく、予想以上に帯電、加速は難しく、また、真空ポンプを含めた実験装置の故障が相次いだこともあり、3年間では当初予定していたテザーへの損傷観察実験までは至らなかったが、粒子加速が可能なことを確認できたことは、この方式のデブリシミュレータへの応用の可能性を初めて示したものとして大きな成果があったと考えられる。今後、引き続き、このデブリシミュレータの性能実験及びテザーへの模擬デブリ衝突実験を継続していく予定である。また、これら実験に加えて、デブリによるテザーへの損傷の影響をモデルにより解析した。一次試作機、二次試作機の設計及び予備実験結果、解析の結果については後述の国際電気推進学会および宇宙輸送シンポジウムにて発表を行った。
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