研究概要 |
ディーゼル機関の燃焼過程で生成する窒素酸化物(NO_X)と微粒子(すす)はトレードオフの生成要因をもつため同時低減は困難である。これに対して,燃焼室内に水を導入する水添加燃焼(乳化燃料の使用,燃料と水との層状噴射など)は燃焼の悪化を抑えながらNO_Xを削減しうる手法として知られている。しかし,燃焼過程で生成する微粒子ならびに吐煙に対して及ぼす影響には不明な点が多い。本研究では,はじめに水乳化燃料使用時における吐煙生成の蛍光を明確にすることを目的として,実機関を用いて実験を行った。すなわち,実験パラメータとしてベース燃料の種類(軽油,および植物油のエステル化燃料;バイオディーゼル油の2種),EGR適用の有無,および水添加率などを設定して調べた結果,これらすべての実験において,乳化燃料を使用した場合には水添加なしに比べ吐煙濃度が顕著に低減することが明らかとなった。つぎに,微粒子やNO_Xなどの生成過程を時系列的に明らかにすることを目的として,現象を単純化した模型実験を計画した。すなわち,ディーゼル機関の燃焼をモデル化した燃焼室,雰囲気条件の準備を行うための高温高圧空気作製容器,燃焼を任意の時刻で中断するためのソレノイド駆動の隔膜破断装置,膨張した燃焼ガスをとどめておくためのガス膨張室,および燃料単発噴射装置などで構成される実験装置を製作した。燃焼室とガス膨張室とは隔膜(薄い鋼板)で仕切られており,この隔膜をソレノイド駆動の撃針により瞬時に破断することでガスを急速に膨張室に導いて燃焼を中断する。試作の結果,封入空気の初期圧力と温度がそれぞれ2MPa,450℃の条件で実験が可能な装置を作ることができた。しかし着火遅れが実機に比べ長いなど,ディーゼル燃焼としては不十分であることから,微粒子生成量に関する正確なデータがとれるよう,さらに装置の改良が必要である。
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