研究概要 |
まず,人工衛星NIMBUS-7 CZCSセンサにより得られた東京湾,大阪湾,広島湾のクロロフィルa濃度画像を使用し,その画像から得られたクロロフィルa濃度と海上実測値との比較を行った。この結果,NASA/GFSCがCZCSに対して用いたクロロフィルa推定法は,東京湾など人口が集中する都市に近い沿岸水域では推定誤差が大きくなることが分かった。 次に,人工衛星LANDSAT TMセンサのデータを使い,そのデータからクロロフィルa濃度を推定し,その推定値と実測値との比較を行った。まず,東京湾を対象地として,最近発表された7つのクロロフィルa濃度モデルと海上実測値との比較をそれぞれ行った。その結果,最も推定誤差の小さかったのは[Morel]の推定モデルであった。 その[Morel]の推定モデルを使って東京湾,大阪湾におけるクロロフィルa濃度推定を行い,その結果と海上実測値との比較を行い,推定モデルの評価を行った結果,東京湾,大阪湾の両湾とも定性的に合っていた。このことより,[Morel]のクロロフィルa濃度推定モデルを使ってクロロフィルa濃度分布の定性的な把握を行うことは可能であると考えられる。 最後に,大阪湾に海上実測データから重回帰分析によりクロロフィルa濃度推算式を導出し,クロロフィルa濃度分布の経年変化をみた。クロロフィル分布図は,停滞水域となる湾奥部において高濃度となり,それが時計回りの湾流によって移流・拡散されていく様子を明らかにすることができた。 今後の課題として,水面下におけるプランクトンのプルームを考慮したクロロフィルaの高濃度水域に対する推定モデルの開発が必要である。また,今回大気影響補正は,大気組成一定のモデルを用いているが,オゾン,水蒸気,浮遊物質濃度等のデータをもとに,大気組成が変化する現実的なモデルの適用が必要であると考えられる。
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