研究概要 |
アミロース合成能力が最も高いWx-B1a遺伝子が座乗する4A染色体をnull遺伝子の染色体で置換するとアミロースの減少は約2%であった.Chinese Spring(CS)とCS(Kanto107 4A)のF1をもとに育成した98系統の4A染色体組み換え置換系統のうちWx-B1b遺伝子をもつ51系統の間にはWx座とは独立な約2%の変異があった.10マーカーからなる4A染色体の遺伝的連鎖地図を構築しQTL分析を行ったところ,動原体近傍の短腕上にアミロース含量に影響する遺伝子座のあることが初めてわかった.出穂日と草丈のQTLはWx-B1の近傍にあること,収量形質のQTLは短腕上のRFLPマーカーと連鎖していることがわかった.Wx-B1座は小麦粉の糊化特性に対しても他面効果を持ち,Wx-B1タンパク質の欠如によって最高粘度とブレークダウンが向上した.さらに短腕上に効果の小さなQTLが座乗し,Kanto107 4A染色体由来のQTLが最高粘度とブレークダウンを高める働きを持っていた. CSとモチ性のCSを交配したF_1にトウモロコシを受粉し,85系統の複半数体を作出した.アミロース含量は,モチタイプの1.0%から野生型の24.5%まで変異があり,いずれかのWxタンパク質を1つ欠失したタイプでCSより2%程度低く,二重に欠失したタイプでは6〜8%低下した.最高粘度はモチタイプが最も高く,次いで二重欠失タイプの順であった.ブレイクダウンの結果も同様で,Wxタンパク質の欠失と粘弾性の増加が連動していた.特にWx-B1タンパク質の欠失が他の2つのWxタンパク質の欠失より粘弾性の増加効果が大きかった. アミロペクチンの鎖長分布は8タイプ間に明確な差異はなかった.したがって,GBSS Iの活性低下は,アミロペクチンの側鎖構造に変化をもたらさないと考えられた.
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