研究概要 |
RMuトランスポゾンのクローニングをすすめて,5サブファミリーに分けることのできる18クローンを得た.これらの構造的特徴は140-275bpに及ぶ長い末端反復配列である.さらに内在rmuA遺伝子を有するかどうかによりRMu1ならにRMu2因子に大別される.TIRは141-275bpまでの変異があり,高い相同性は末端部にみられる.これはmurA遺伝子がMutatorファミリーの可動性因子に結合する25-56ntを含む最末端から90ntまでにおいて高い相同性を示すことと一致した.特に,RMu1-IR36においては90ntの左右TIRが完全に一致する.また,内部構造における差違から分類したサブファミリー間においても片側のTIR間で高い相同性を示すことは単純に左右の相同性のみによって機能を維持しているのではなく,MuDRと同様に転写制御領域などを含んでいることが推測される.ただ,まだ内部遺伝子の制御領域が特定されていないことより,この相同性の保持は今後の課題となろう. RMu1は内部の多様性を有する複数の因子に分けられる.RMu2因子にもRMu1からの内部欠失によって生じた系統があり,RMu2-IR36aはIR36ゲノムからTIR末端に設定したプライマーによってクローニングされた.これらの欠失は主に縦列配列を介して生じることがRMu1-IR36ならびにRMu2-IR36aの塩基配列の比較から推定される.ESTデータベースからC98506(日本晴れ,開花期のcDNAライブラリー)とRMu1-IR36,RMu2-IR36a配列との同一性がみられた.この配列はRMu1-A1では完全に一致したためRMu1-A1もしくは,その類似因子から転写されたものと考えられる. RMu1-IR36の内部配列(TNP)ならびに右TIRを含む700bpのTIR配列をプローブとして,RMu1-IR36関連配列のマッピングを行った.マッピング材料は,あさみのりxIR24のKRIL系統を利用した.その結果,TNPで2ならびにTIRで10カ所の位置にマッピングされ,ゲノム全体に散在していることがわかった.また.これらのプローブを利用して在来種間での多型を調査した.易変異系統,赤毛系統の自殖後代8系統を用いたサザン解析においてはTNPプローブで3系統,TIR系統で2系統のRFLPパターンを示す個体がみられた.ただし,これらの多型が遺伝せず,異なる自殖後代ではこのような多型を生じる頻度が異なった.したがって,これらの多型が体細胞で生じた変異か挿入領域近傍で生じたメチル化などによる制限部位の修飾により生じた後生的な,一時的な変異であるかについては明らかでない.これらの違いを示す有効な方法がないため,転移酵素に共通する部位を有するrmuA遺伝子の転写を追跡することで,これら転移を高頻度に誘発する条件を探索した.その結果,低温ストレスで誘導可能であった.これらの配列はアラビドプシスへの形質転換用ベクター配列に組み込んだ.
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