本課題では、稲において分げつ数の品種間差がどのような機構によって生じているのかを明らかにしょうとした。トウモロコシでは、祖先野生種から栽培化された過程で分げつ数が大幅に減少したことが知られているが、この変化はtb1(teosinte branched1)遺伝子の変異によっていることが明らかにされている。そこで、本研究ではこのtb1遺伝子に着目し、その稲ホモログがtb1と同様に分げつ数調節の機能を果たしているかどうかを調べるとともに、それが分げつ数の品種間差の原因となっているかどうかを検討した。まず、あそみのり×IR24組み替え自殖集団を用いてトウモロコシのtb1遺伝子の稲染色体へのcomparative mappingを行った。その結果、tb1のホモログが第3染色体のマーカーC1351の近傍に乗座していることがわかった。稲の染色体のこの領域はtb1の乗座するトウモロコシの第1染色体長腕中央部と同祖的な関係にあることがすでにわかっており、この点からも、C1351近傍のtb1ホモログはtb1のオルソログそのものであると考えられた。つづいて、第3染色体のこの領域にマップされている突然変異体のうち分げつ数に係わるものがないか探索したところ、多げつ性を示す既知の突然変異体の1つがこれに該当することがわかった。そこで、この表現型の遺伝子とtb1ホモログの異同を遺伝学的に調べたところ、両者は組み替え率0%で連鎖しており、この突然変異体はtb1ホモログの機能欠損型の突然変異体であるものと考えられた。このように、tb1のオルソログは稲においても分げつ数の制御に係わっているものと考えられた。さらに、この領域から報告されている分げつ数のQTLが一例ではあるが見いだされたので、本遺伝子が分げつ数の品種間差の原因の1つとなっている可能性も高いものと考えられた。
|