研究概要 |
数種の緑肥マメ科作物における根粒菌の感染様式の多様性について,発色マーカー遺伝子であるgusA遺伝子を導入した根粒菌を作出して検討した.2ヵ年にわたる研究結果の大要は以下のとおりである. 1.クロタラリア菌(Bradyrhizobium sp. USDA3024株),ラッカセイ菌(Bradyrhizoium sp.U9709-A株),セスバニア菌(Azorhizobium caulinodans U9709-SRS株)の3種にそれぞれgusA遺伝子を接合伝達(pCAM121(mTn5SSgusA21)をもつE.coliS17-1λpirを利用)により導入することができた. 2.いずれの菌株においても,gusA導入はそれぞれのマメ科作物において根粒形成ならびに窒素固定に影響せず,非導入菌株(対称株)と同様に根粒が形成され,アセチレン還元活性に差異は認められなかった. 3.クロタラリア菌の接種試験を,寒天培地法,グロースポウチ法,火山灰土またはバーミキュライトを充填したポット栽培法で行ったところ,グロースポウチ法(BD培養液を添加)において発足部位の観察が最も容易であり,本方法を利用する際には培地の選択が重要であった. 4.クロタラリア菌を接種後,2,4,6,8,10日目に主根および一次分枝根の表面およびそれぞれの横断切片を検鏡観察したところ,2日目から主根根毛内に感染糸様構造が形成されることが明らかとなった. 5.ラッカセイを供試して,根粒形成の初期過程における硝酸態窒素の影響を水耕栽培法により検討したところ,根粒数,窒素固定活性に顕著な阻害が認められた. 6.セスバニアの茎粒形成過程を観察したところ,初生茎粒は子葉節上に形成されることが明らかとなった. 7.2年間にわたる研究において,これまで根粒菌の感染過程について十分な検討が行われてこなかった熱帯原産の緑肥マメ科作物であるクロタラリアにおいて,gusA標識菌株の青色発色を追跡することで初期感染課程に感染糸様構造が形成されることを主として明らかにした.しかし,当初の目的であったマーカー遺伝子を利用した種々のマメ科作物間における根粒菌感染過程の多様性については,十分な成果を得るには至らなかった.なお,最近バクテリアのモニタリングに利用されはじめているGFP遺伝子の各種根粒菌への導入については継続して実験を遂行中であり,これまでに得られた成果をもとに形質転換菌株の作出を予定している.
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