研究概要 |
ファレノプシスのエンブリオジェニックカルス(EC)からは多数のPLBが形成される.そこで,ECにパーティクルガンを用いて遺伝子導入を行い,再生したPLBから遺伝子組み換え体の選抜を試みた.Phalaenopsis Richard Shaffer'Santa Cruz'のPLB切片より誘導したECを供試し,プラスチックシャーレにろ紙を敷き,その直径30mmの円内にEC(500〜600mg)をのせた.まず,パーティクルガンの発射圧力がβ-グルクロニダーゼ遺伝子(gus)の一過性発現に及ぼす影響を調べた.その結果,プラスミドDNApBI221の場合には140kg/cm^2,pWI-GUSでは170kg/cm^2のときに,発現数はそれぞれ最大となった.また,いずれのベクターでも140kg/cm^2になるとgusの一過性発現数は明らかに多くなった.次に,遺伝子組み換え体選抜のため,ピアラホス耐性遺伝子(bar)をもつDNApMSP38とともに,gusをもつDNApWI-GUSをECに撃ち込んだ(発射圧力;140kg/cm^2).遺伝子導入したECをVW培地に移植したところ,約15,000個のPLBが分化した.0.5および1.0mg/lのビアラホス添加培地にこれらを2週間ごとに移植し,さらに5mg/lビアラホス添加培地への移植を2回行った結果,緑色または黄緑色の6個のPLBが得られた.これらをビアラホス無添加培地に移植したところ,うち5個体は枯死し,1個体は緑色を回復して2個のPLBを形成した.これらの2PLBは,その上部切片より小植物体を形成し,下部切片からはそれぞれ8個,14個のPLBが形成された.しかしながら,これらの生存2個体由来の小植物体から抽出したDNAを鋳型としておこなったPCRでは,gus,barのいずれについても増幅断片は認められなかった.温度条件を変えてPCRを行ったが,結果はネガティブであった.また,gus発現検定においても,これらの植物体では呈色反応は観察されなかった.
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