研究概要 |
我が国の気候や風土に適したキイチゴを育成することを目的に,本邦に自生する野生種28種,外国産野生種24種,栽培品種であるラズベリー12品種,ブラックベリー6品種及び未同定の不明種18種を遺伝資源として収集した.これらの野生種と栽培種の一部について,花芽の分化,開花及び成熟の様相,果実の成長などを生理,生態的に調査した.また,野生種間及びラズベリーまたはブラックベリーの栽培種と我が国の野生種との交雑を行い,種間雑種の育成を試みた.その結果は以下のとおりである. クマイチゴの花芽分化は,8月頃より始まり,年内には頂花雄ずい形成期まで発達した.ブラックベリー'マートン'の開花期と収穫期は結果枝によって異なり,主茎上半部より発生した結果枝では下半部より発生したそれよりも開花期と成熟期が早かった. 本邦原産野生種の成熟果の大きさは,栽培種のブラックベリー3品種のそれらに比べ小さかったが,いくつかの野生種は,ブラックベリーとラズベリー品種の果実に比べ糖含量が高く,酸含量が低かった. 野生種とブラックベリー栽培種の果実(集合果)の成長は,二重S字型成長曲線を示した.果実中のサイトカイニン様物質の活性は果実成長第I期に,IAA含量は同II期に,GA様物質の活性は同III期にそれぞれ増大した.ABA含量は,開花期に高く,その後低下して果実成長第II期には低かったが,成熟期にはやや増大した.果実からのエチレンとCO_2の排出量は,いずれも完熟期に急激に増大した. また,野生種間並びにブラックベリー及びラズベリーの栽培種と野生種間の種間雑種を多数育成した.これらの雑種は,今後育種素材としての評価を行う予定である.
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