| 研究概要 |
西表島に自生していたツルランを13種類の酵素について分析した結果,7種類のアイソザイム,すなわちGOT,IDH,MDH,ME,PGI,6-PDH,およびSADHで酵素多型が観察された.特に,GOT,MDHおよび6-PDHはツルランの種内のアイソザイム分析に有効であった.
西表島のウダラ川流域のツルランの3つの群落の48個体についてアイソザイム分析を行った.これらの個体間では上述の7種類のアイソザイムにおいて高い遺伝的多様性を示した.
ウダラ川の3つの群落内の1つの群落Bについてそれぞれの個体のアイソザイム分析を行った結果,ほとんどの個体が4〜5種類のアイソザイムを用いることで個体を識別することが可能であった.このことは,この群落の自生する個体のほとんどは種子繁殖によって得られた実生群で,しかもツルランが高い他殖性を示す植物であると思われた.しかし,群落内で隣接していた2個体は7種類のアイソザイムでも識別ができなかった.このことは,これらの個体が栄養繁殖によるものと考えられた.
以上のことから,ツルランは群落内で種子繁殖と栄養繁殖を行いながら,高い遺伝的多様性とともに種を維持していると考えられた.
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