研究概要 |
我々はこれまでヒメダニ科マダニOrnithodoros moubataの卵形成に関連して、卵黄タンパク質vitellogenin(Vg)の性状解析と発現調節について研究してきた。Vgは脂肪体で合成され、体液を経て卵黄に取り込まれ、vitellin(Vn)として貯えられる。これまで研究でsynganglionから出される卵黄形成誘導因子(VIF)が体後半部の組織から第2の因子、脂肪体活性化因子(FSF)を分泌させ、脂肪体にVg合成を誘導することが示唆されえている。我々はこの第2因子がステロイドである可能性を調べてきた。Ecdysteroidsを未吸血ダニに注射して体液中のVgを検出した。また吸血と卵形成過程での体液中のecdysteroids能度を測定した。更にecdysteroid作用の有無の間接的証拠を得るため、そのreceptorとしてのEcR及びUSPのクローニングを試み、昆虫のEcR,USPのDNA binding domainに近い部分配列のクローニングに成功している。EcRの配列はマダニ科のAmblyomma americanum,カイコ Bombyx moriのEcR及びヒトのsteroid receptor,FXRとのホモロジーは100%,83%,85%であった。RXRの配列はA.americanum,B.mori(USP),ヒト(RXR)とのホモロソーがそれぞれ93%,95%,85%であった。,加えて、3種類のnuclear orphan receptorのDNA binding domain配列に成功した。これらの配列はショウジョウバエDrosophila melanogasterのseven-up,HR3及びHR78等の核リセプターのDNA binding domainとそれぞれ94%,89%及び87%のホモロジ-があった。以上のことからO.moubataのEcR,RXRの存在が確認でき、これらの機能と卵形成との関連について今後検討を進める。
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