研究概要 |
1.シンジュサン♀×エリサン♂のF1雑種では,12L:12Dで飼育した場合に,雌蛹の大半が非休眠となり,雄蛹の大半が休眠蛹になったので,休眠性には伴性遺伝の傾向がある。戻し交雑世代でも,蛹休眠が伴性遺伝した。F1,B1ともに,長日条件の下では休眠蛹を生じることがなかった。シンジュサンとF2の休眠蛹を上蔟後30日以上25℃で保存し100日間25℃と4℃で保存した後、体液のトレハロース濃度と過冷却点を測定した。シンジュサンにおいて、25℃で保存した休眠蛹の体液のトレハロース濃度は平均15mg/mlであり、4℃で保存した休眠蛹は平均34mg/mlであった。25℃で保存したF2休眠蛹の体液のトレハロース濃度は平均14mg/mlであったが、4℃で保存したF2休眠蛹では5mg/mlから37mg/mlの間でさまざまに分離し、平均は18mg/mlであった。シンジュサン休眠蛹の過冷却点は25℃保存の個体は平均-21℃、4℃保存の個体は平均-23℃で、エリサン非休眠蛹の過冷却点よりそれぞれ3℃,5℃低く、冷蔵による過冷却点の降下はみられなかった。シンジュサン♀×エリサンのF2休眠蛹における過冷却点は25℃保存では平均-27℃、4℃保存では平均-21℃でともにシンジュサンに近く、冷蔵による過冷却点の降下はみられなかった。過冷却点と体液トレハロースの濃度の間に相関はなかった。 2.シンジュサン×エリサンのB1世代およびさらに後代での観察から,シンジュサンの緑色体色は,常染色体上の優性の単一遺伝子に支配されることを明らかにした。また,シンジュサンの幼虫体表には胡麻状の斑点が多数存在する。この遺伝子も,常染色体上の単一の優性遺伝子に支配されることが分かった。シンジュサンの繭は淡茶褐色を呈し,エリサンの繭は白色である。雑種においては,きわめて多様な色彩の繭色が出現した。種々の交雑による観察結果から,赤色色素を発現する遺伝子と,灰色の色素を発現する遺伝子の組み合わせによって多様な繭色を説明できそうである。
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