研究概要 |
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ[Peptidylarginine deiminase](以下PADと略記)は蛋白質のArg残基を脱イミノ反応によりCit残基に変換する蛋白質修飾酵素であり、その生理機能について大変興味が持たれる。PADには4種類のアイソタイプ(TypeI,II,III,IV)が存在するが、先に、我々はこれら全てのアイソタイプのcDNAクローニングに成功し、その全塩基配列及び推定アミノ酸配列を決定した。本研究は、ジーンターゲティングによりPAD遺伝子をノックアウトした変異マウスを作製、ついで同変異マウスの表現型の詳細な解析から本酵素の生理機能を解明することを目的としている。昨年度、マウスPADの全てのアイソタイプ遺伝子の発現制御領域を含む5'-Flanking領域のクローニングに成功し、その塩基配列を詳細に解読し各アイソタイプ遺伝子の発現制御領域の特色を明らかにした。さらに昨年度末から本年度にかけて、ターゲティングベクターを作製を目的として、クローン化された各PAD遺伝子をプローブとして相同組換えES細胞由来の長鎖PAD遺伝子を得るため、ES-129/SvJ BACライブラリーをスクリーニングし、各アイソタイプの長鎖遺伝子のクローンを得ることが出来た。そこで、本研究ではこれら4つのアイソフォームの内、最も研究が進み、その機能の解明が急がれているTypeII遺伝子に的を絞り、その全物理地図を解明した。ついで、ターゲティングベクターを作製するのに適した領域のデザイン並びに構築を行い、TypeII遺伝子のプロモータ-1stエキソン領域をカナマイシン耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成、染色体相同組換えES細胞の分離に成功した。ついで、同細胞をマウス胚盤胞への移植し変異F1マウスの作成に取りかかった。本年度内では、残念ながらPAD TypeII遺伝子をノックアウトしたマウスを作製するには至らなかったが、変異F1マウスの誕生後直ちにホモ変異マウスの作製に取りかかり、PAD遺伝子ノックアウトマウスの作製による同酵素の機能解析に関する研究成果を発表する予定である。
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