研究概要 |
本研究では海産無脊椎動物の中でも,特に棘皮動物に属するグミ(Cucumaria echinata)体内に存在する糖結合タンパク質(レクチン)を中心に,その構造と機能について研究を行った。グミに4種類存在するCa^<2+>依存性レクチンの中でも、CEL-IIIと名付けられた分子量47,500のガラクトース特異的レクチンは、赤血球膜にイオン透過性の小孔を形成して溶血活性を発現する。そこで、ヒト赤血球膜から構成脂質を分離・精製し、それぞれの膜構成脂質のCEL-IIIレセプター能の評価を行った。その結果、非還元末端にβ-結合ガラクトースまたはN-アセチルガラクトサミンを有する糖脂質はCEL-IIIを強く結合し高いレセプター能を示すこと,また、このような糖脂質のレセプター能には、単にCEL-IIIとの親和性だけではなく、その糖鎖の結合様式や長さなどが大きく関係していることが示唆された。一方、CEL-IIIの溶血活性に関与するアミノ酸残基を化学修飾により検討した結果,CEL-IIIのアミノ基やカルボキシル基を修飾した際に溶血活性の大きな低下が見られたことから,これらを有するアミノ酸残基が溶血機構に大きく関与しているものと考えられた。また,カルボキシル基に関しては,溶血活性の他に糖結合活性も大きく低下したことなどから,CEL-IIIが有する2箇所の糖結合部位のうちいずれか片方の糖結合能に関与しているものと考えられた。一方,このような溶血性レクチンのモデルとして,通常のレクチンと両親媒性α-ヘリックスペプチドのコンジュゲートを作成し,赤血球膜との相互作用を検討した結果,レクチン活性に依存した溶血活性を発現することが明らかになり,新規な機能を持つタンパク質の設計の可能性を示すものと考えられた。
|