研究概要 |
マングース血清にはハブ毒出血因子に対する3種類の抗出血因子が存在する。分子量はそれぞれ、約65,000ダルトンで糖含量を異にしている。それぞれのアミノ酸組成、アミノ基末端のアミノ酸配列は相同性が高く、その構造に関し、興味が持たれてきた。また、同抗出血因子はin vitroでハブ毒の出血因子と弱い結合を形成するが、出血因子を分解したり、出血因子の構造に不可逆的な変化をもたらしたりすることはない。一方、同抗出血因子の構造をタンパク質化学的に調べたところ、イムノグロブリンスーパーファミリーに属する、ヒトα 1B-糖蛋白質と高い相同性があることが明らかになった。従って、同抗出血因子は免疫グロブリンと類似の機構で出血因了の作用を阻害することが強く示唆された。また、このことによって、これまで生理的機能が不明であったα 1B-糖タンパク質が生体防御系の一翼を担っている可能性も示唆された。 さらに、マングース肝臓から調製したmRNAを鋳型にし、逆転写酵素でcDNAを合成し、次いで、合成cDNAを用いてPCR反応を行ったところ、約300、400、および500bPの3種類の増幅産物を得る厩とができた。これはこれまでの結果を支持するものである。さらに、完全長のcDNAを得るために、アミノ基末端プライマーに制限酵素Pst lの制限部位を付加したプライマーを調製し、oligo dTとPCRを行ったところ、約2Kbpの断片を得ることができた。この長さのcDNAは抗出血因子の分子量を反映しており、完全長のcDNAを増幅することができた。現在同cDNAの塩基配列を決定中である。
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