研究概要 |
Thermoactinomyces vulgaris R-47のアミラーゼII(TVAII)はプルランも分解する特異なアミラーゼである。種々のオリゴ糖に対する作用から、この酵素はマルトース単位の還元末端側をα-1,4結合、α-1,6結合にかかわらず分解すると考えられる。従来の研究より、202番目以降のHKYDTというアミノ酸配列が基質認識に重要であると推察されたので、それぞれをTrp、Alaに変異させた酵素の種々の基質に対する速度論的解析を行い、以下のことが分かった。(1)Trpに変異させると全ての変異酵素で活性が大きく低下しこの領域が活性に重要であると考えられること。(2)H201A,D205A,T206Aの変異酵素は野生型酵素と大きな変化は無く、これらの残基の重要性は低いこと。(3)H202A酵素は低分子基質に対するKm値の増加が顕著であった。(4)K203A酵素では全ての基質に対してKm値が大幅に増加した。(5)Y204A酵素ではkcat値が顕著に減少した。これらの変異酵素の性質をTVA IIの結晶構造を考慮して考察すると、H202とY204の側鎖はそれぞれサブサイト-2と、サブサイト-1に入る糖と相互作用し、基質の認識に重要である。また、K203の側鎖は基質結合部位近傍の水素結合ネットワークに関与して、基質結合部位全体の安定性にかかわっている考えられる。これらのことを実証するには構造解析がもっとも適している。そのために本酵素の結晶化を目指して大量発現系の構築を試みた。種々のpETシステムを検討したが、封入体を形成するため、可溶性蛋白質として大量発現させることはできなかった。また、構造を比較するため、高度好熱菌Thermusthermophilus HB-8よりプルラナーゼ遺伝子をクローニングし、大腸菌で発現させた。
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