研究概要 |
1.モンパノキからマダラチョウのメスの摂食刺激物質の単離-モンパノキの小枝を蒸留水で抽出後、得られた水抽出物をスジグロカバマダラのメスに対する摂食刺激活性を指標にゲルろ過およびシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、スジグロカバマダラのメスに対して強い摂食刺激活性を示す塩基性の画分を得た。この塩基性の画分をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し、6種のピロリチジンアルカロイド(1-6)を単離した。化合物1-6の構造を分光分析学的常法を用いて、それぞれ3'-acetylindicine(1),indicine(2),3'-acetylindicine N-oxide(3),indicine N-oxide(4),6'-methylindicine(5)および6'-methylindicine N-oxide(6)と決定した。 2.マダラチョウのメスに対するピロリチジンアルカロイド(1-6)の摂食刺激活性試験結果-沖縄に棲息する5種のマダラチョウ(スジグロカバマダラ、リュウキュウアサギマダラ、カバマダラ、ツマムラサキマダラおよびアサギマダラ)のメスに対する1-6の摂食刺激活性試験を行った結果、スジグロカバマダラに対して4に、リュウキュウアサギマダラに対して3および4に、ツマムラサキマダラに対して1-4に、アサギマダラに対して3および4に、それぞれ摂食刺激活性が観測された。カバマダラのメスに対してはいずれの化合物でもその活性が観測されなかった。以上の結果から、モンパノキに含まれるマダラチョウのメスに対する摂食刺激物質はマダラチョウの種によって異なることが明らかとなった。また、マダラチョウのオスに対するモンパノキに含まれるpharmacophagous behavior刺激物質を調べ比較した結果、モンパノキに含まれるオスのpharmacophagous behavior刺激物質とメスの摂食刺激物質とは同種間でも異なることが明らかとなった。マダラチョウの雌によって摂取されたピロリチジンアルカロイドの行方については2種のチョウについて明らかになりつつあるが、マダラチョウ全体としての結論を得ることはまだできず、なお現在研究中である。
|