研究概要 |
1.ワインの混濁形成に影響を与えるブドウのタンパク質に関する実験 試料用ブドウとしてカベルネ・ソーピニヨン,マスカット・ベリーA.甲州,シャルドネ,リースリング,セミヨンの6品種を用いて,果汁,果皮,種子中の遊離アミノ酸,ペプチド,タンパク質量,及びそれらのアミノ酸組成を調べた。 果汁では遊離アミノ酸量はブドウ品種によって異なり,精度が19ブリックスの時では400〜2230mg/Lの範囲にあった。可溶性タンパク質は100〜331mg/Lの範囲にあり,セミヨン種が最も多く含んでいた。種子では遊離アミノ酸濃度が1mg/g以下と低く,タンパク質濃度は30〜50mg/gであった。果皮でも遊離アミノ酸はほとんど検出されず,タンパク質は1〜5mg/gの濃度にあった。 赤ワイン用品種であるカベルネ・ソーピニヨンやマスカット・ベリーAは,タンパク質濃度が低く,果汁やワインからのタンパク質の調製が困難であり,電気泳動での分離も不十分であった。一方,セミヨン種ブドウにタンパク質が多いことが明らかになった。そこで,ワインタンパク質はセミヨン種の果汁,フリーランワイン及び赤ワインの製法と同じ方法で試醸した醸しワインから調製した。これらに含まれるタンパク質を硫安塩析法及びSuperdex75HRカラムを用いたHPLCにより分離した。HPLCの溶出液を分取した結果,果汁とフリーランワインでは純度90%程度のタンパク質画分が得られたが,醸しワインでは55%程度の糖が含まれていた。これらのタンパク質画分を電気泳動で分離し,試料間の違いを調べた。果汁とフリーランワイン間では類似していたが,醸しワインは他と異なっていた。 これらのタンパク質試料を用いて,混濁形成実験を行った。タンパク質画分の水溶液に種子フェノール画分を混合し,12時間反応後,遠心分離により混濁を形成したタンパク質を除去した。上清をHPLCで分離し,混濁形成前後のタンパク質の違いを比較した。その結果,タンパク質の種類により混濁形成に対する感受性に違いがあることが明らかになった。 2.ブドウポリフェノールオキシダーゼの精製実験 タンパク質に結合するフェノール化合物を酸化するポリフェノールオキシダーゼをSephadexG-100等のカラムクロマトグラフィーを用いて精製し,それらの酵素化学的性質を調べた。ブドウポリフェノールオキシダーゼの分子量は約40kDaで,至適pHは6.3であった。
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