研究概要 |
不活性代謝物とされる低分子アンジオテンシン(ANG)代謝物の生理作用を明らかとするため、ヒトレニン及びアンジオテンシノーゲンを保有するつくば高血圧マウス(THM)並びに正常血圧者を用いて代謝及び吸収挙動を詳細に検討した。なお、ANG代謝物量は新たに設定したNDA誘導体化蛍光HPLCカラムスイッチング法により定量した。その結果、THM(12週齢)に対してANG(3-4)の0.1mg/g経口投与によって顕著な血圧低下作用が認められ、本ANG代謝物がヒト循環レニン-アンジオテンシン系に対して降圧作用を有したペプチドであることを初めて実証した。また、THMでのANG(3-4)の血中代謝量(426fmol/ml-plasma)は野生型マウス(207fmol/ml-plasma)と比べて約2倍と多いものの、ANGI(THM:2247fmol/ml-plasma,Wild:530fmol/ml-plasma)及びANGII(THM:143fmol/ml-plasma,Wild:53fmol/ml-plasma)量の増大量(3倍から4倍)と比べて明かに低値であった。この結果は血圧の亢進とANG(3-4)代謝量との間に負の相関関係が成立するとのヒトでの知見と一致するものであり、血圧の亢進にヒトRA系でのANG(3-4)代謝の異常が関わっていることを強く示すものであった。また、ヒト正常者に対して24時間までのANG(3-4)単回投与試験(負荷量;3,6,12mg/drink)を行ったところ、血中内濃度はANG(3-4)投与後2時間で最大となり、約8時間で完全にもとのレベルまで消失した(半減時間;3.1時間)。このことは、正常血圧状態では外因性ANG(3-4)は一過性の濃度増大を引き起こすものの、内因性ANG(3-4)の代謝刺激とはならないことを示すものであった。
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