研究概要 |
ヒノキ属樹木の漏脂病害への感染や進行を,樹脂成分化合物の発現や増減により確実に把握する事を行った. 1.漏脂病に感染していないヒノキ樹皮中の成分化合物を調べ,1種のジテルペン二量体と2種のアビエタン系ジテルペンをヒノキからはじめて単離し,同時に既知のジテルペンを5種単離した.新化合物の二量体は漏脂病に感染していないことを示す標識テルペンである. 2.漏脂病ヒノキアスナロ樹皮の酢酸エチル抽出物から4種のジテルペンと1種のモノテルペンを,ヒノキアスナロから初めて単離した.漏脂病ヒノキの樹脂と比較して共通のジテルペンが単離され,それらの多くはラブダン系ジテルペンであった.これらは両樹木から初めて単離されたものが多く,漏脂病または漏脂病病原菌と密接に関係していると考えられる. 3.健全ヒノキアスナロ樹皮成分中の標識化合物として,炭素数16から26個の高級脂肪酸のメチルエステルを見出した. 4.樹脂胴枯病ヒノキ樹脂から11種のジテルペンを単離し,樹脂胴枯病ローソンヒノキ樹脂から7種を単離した.樹脂胴枯病ヒノキ樹脂に豊富な化合物はtorulosolとcupressic acidであり,樹脂胴枯病ローソンヒノキ樹脂に豊富なのはacetyl isocupressic acidとisocupressic acidであり,これらは各々の樹脂の標識化合物であると考える. 5.サワラ樹皮から15種のジテルペンを単離し,このうち1種は新化合物であり,4種は初めてサワラから単離された.
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