研究概要 |
佐渡島におけるコナラ属群落(カシワ,ウラジガシ)の実生更新特性について,以下の観点から明らかにした。1.後継樹の多寡,分布を含む林分構造から推定される林分の成立過程,2.開花結実から堅果の散布,実生の発生・生残の実生更新初期過程における更新制限要因,及びその強度,3.落下堅果の動態における堅果の散布/捕食者である野ネズミの機能,4.実生の生残条件 その結果,以下について明らかになった。 1.林分の更新過程:ウラジロガシの樹高分布,胸高直径分布はそれぞれJ字型,ベル型を示した。このことから,調査林分にはウラジロガシの後継樹となる稚樹がほとんど存在せず,一斉に更新した後ほとんど更新が行われていない。カシワの更新過程も同様である。 2.更新制限要因:カシワの開花結実から実生までのデモグラフィーの解析から,高い虫害率が実生更新制限要因であり,その原因として雌花生産量の年変動が小さいため虫害をエスケープできないことが考えられた。 3.堅果散布/捕食者である野ネズミの機能:佐渡島ではアカネズミがカシワ,ウラジロガシ,及びスダジイ堅果の消失に関与している。消失した堅果はいったん林分の広い範囲に分散貯蔵された。しかし,時間の経過とともにすべての堅果が再発見され,翌春まで捕食される。 4.実生の生残条件:5年生以上のウラジロガシ実生の本数と11月から4月までの冬季の相対PPFD値の間に有意な相関が認められ,一部に混交している落葉広葉樹の樹冠の下や林縁など,冬季に光環境が好転する場所で実生が生残,成長している。カシワでは,実生が成立して1年目の秋の時点で林分に生存している実生数には,実生の発生数が重要である。 以上の結果からコナラ属群落の適正な維持管理技術について検討したが,長期継続調査による時間的な変動を明らかにする必要がある。
|