研究概要 |
【目的】本研究は,森林地における蒸発散現象を蒸散と蒸発に分離し,それぞれを個別に定量化する手法について土壌カラム実験をもとに検討したものである。土壌カラム実験では,土壌水分変化法をベースとする解析手法に基づき蒸発量を分離し定量化した。本研究は,平成10年度〜12年度に実施した「土壌カラムを用いた浸透・蒸発実験の解析手法の検討」と「疑似根系を埋設した土壌カラムによる表面蒸発量と根系吸収量の分離実験の解析」を基礎としている。本年度は,この解析手法の汎用的な応用性を確かめるため,森林地における測定結果を用い蒸散量と蒸発量を分離して定量化し,既往の測定結果と対比検討しその有用性を論じた。具体的な本年度の成果は以下の通りである。 【結果】不飽和浸透流解析による手法の適用例として,カラム採取地の富士山南西麓斜面で測定した圧力水頭値を用い,そこでの蒸発散量を分離推定した.適用の結果,蒸散量は1.9mm/dayで,蒸発量は1.0mm/dayであり,蒸発散量は2.9mm/dayと推定された.この値は降水量の50%に相当し,短期水収支法や流域水収支法で得られた値とほぼ同様な値であることを示した.以上のことから,本研究で用いた手法を用いることで,森林地における蒸発散量と蒸発散速度を分離して推定できる可能性が示されたといえる.しかしながら,解析方法はカラム実験で検証された仮定に基づいており,今後は温度・水分環境といった実験条件を整え,実証を意図した擬似根系による水分吸収量を定量的に把握する実験が必要であるとした.
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