研究概要 |
本研究では,山地河川の環境形成に重要な役割を担う渓畔林を対象として,5つの課題について研究を行った。その成果の概要は以下の通りである。 (1)低林型木本植生水路の流れの抵抗則に関する研究:水理模型実験により,低林型渓畔林をもつ河道の流れの抵抗則について検討した。樹林の密生度が増大するに伴い,水深比および流速比はそれぞれ指数関数的に増加,および減少傾向を示す。水路断面における流速変化は少なくなって一様化する。流れの抵抗則式を提案した。 (2)渓畔林をもつ河道における掃流砂量に関する研究:水理模型実験により,渓畔林が河道に存在する場合の掃流砂量について検討した。樹林の密生度が増加すると掃流砂量の逓減が起こり,有効掃流力を考慮する必要があることが明らかとなった。有効掃流力を算定する式を提案した。 (3)河道に存在する樹林に作用する抗力と密生度:水理模型実験により,樹木の密生度を変化させて樹木に作用する抗力を測定した。樹木に作用する抗力は樹木の密生度×水深により強く影響され,流速係数とも相関があることが明らかとなった。抗力係数を算定する式を提案した。 (4)渓流内に樹林が存在する場合の渓岸の浸食特性:水理模型実験により,渓畔林が存在する場合の渓岸部における浸食特性を検討した。渓畔林が存在する場合には水路部における浸食速度は減少するものの,渓岸部における浸食速度は必ずしも減少せず,特に岸に近い部分では浸食速度が増加する場合のあることが明らかとなった。 (5)樹林による崩壊土砂の堆積促進機能に関する実態:1998年8月に発生した福島県南部災害について,現地調査,空中写真判読,著警戒積により樹林による崩壊土砂の堆積促進機能を調査,検討した。樹林には崩壊土砂の堆積促進機能があることが明らかとなった。
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