研究概要 |
木炭は,その優れた吸着能力により今日では水質浄化など多方面に利用されているが,木炭の効果に対する漠然としたイメージが先行し木炭本来の効果を過大評価するなど,木炭の機能効果が正しく認識されていない面がある。本研究は渓流環境浄化に関連する木炭の諸特性を知るために,自家製のスギ間伐材木炭,ヤナギ木炭,広葉樹木炭, および市販のレジャー用木炭,市販の備長炭を使用して以下の実験を行った。各実験の概要と結果は,次のとおりである。 (1)各木炭500gを蒸留水15lに投入し,その後の水質変化をイオンクロマトグラフで測定した結果,スギ間伐材木炭のCl^-,K^+等の保有量はレジャー用木炭・備長炭に比べて圧倒的に低く,スギ間伐材木炭の成分組成は極めて純粋であることが明らかになった。 (2)BOD標準液を用いて各木炭の溶存性有機物の吸着力を比較した結果,スギ間伐材木炭の吸着力は備長炭と同等であることが判明した。 (3)沖縄県で採取した赤土から分離した浮遊濁度成分約1500ppmの濁水に顆粒状にしたスギ間伐材木炭を投入しその後の濁度変化を測定した結果,スギ間伐材木炭の吸着効果は浮遊濁度成分にも及び,濁度が40ppm以下に低減されることが判明した。さらに濁水を攪拌し続け木炭と濁度成分との接触時間を増加させることにより,吸着速度は5倍に高められることが明らかになった。 (4)上記実験結果で有効性を明らかにした乱流濾過による浮遊成分の除去速度は,単に木炭充填層を通過させただけの濾過の場合の4〜5倍である。 (5)様々な地質より作成した試料水を用いて乱流濾過による浮遊成分除去実験を行った結果,その効果は地質に関係なく発揮されることがわかった。特に赤土を用いた実験結果が良好で赤土砂対策への利用可能性が示唆された。 (6)スギ間伐材木炭粒子をマサ土中に混入して作成した試料土に対して,円筒法による浸透実験と透水試験を半年間継続して行った結果,スギ間伐材木炭によるマサ土の浸透能と保水性を改善する効果のあることが確認された。
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