研究概要 |
1.高二倍性異数体ドジョウ:受精後の第二極体放出阻止により作出した人為三倍体(3n)の精子で、二倍体(2n)の卵を受精すると(2nx3n)、異数体の胚(染色体数51〜59)が生じるが、約30%は孵化し、その24%は外見上正常であった(対照孵化率80%,正常率96%)。DNA量から2月令魚は2.2〜2.5nの高二倍性であり、異数体の生存性が示された。 2.高三倍性異数体ドジョウ:自然四倍体(4n)の卵と人為3nの交配に由来する一才魚は奇形を示したが、DNA量測定の結果3.0〜3.5nと判定され、高三倍性異数体の生存性が示された。うち、1個体(3.2n)は1.7nの異数性精子を作ることが判明したが、受精能力の確認には到らなかった。また、雌の妊性については判定できなかった。 3.自然異数体ドジョウ:正常核型(2n=50,10m+4sm+36t)に加え、組織によっては0〜8の正常核型染色体と同様のサイズの過剰染色体、0〜5の微小過剰染色体をもつ外見上正常な家系を見いだした。これらの減数分裂では、過剰の二価染色体のほか、一価染色体、微小染色体が見られた。 4.半数体-二倍体モザイクイワナ:ドジョウ以外の魚種についても異数性を検索したところ、外見は正常であるが、不妊雌の半数体-二倍体モザイクイワナを養魚場に見いだした。DNA測定は、この個体の血液、肝臓、脾臓は半数体細胞により、脳は二倍体細胞により構成されることを示した。 以上の研究成果は、僅かの妊性を示す人為三倍体雄が異数体作出の給源となること、ならびに自然界にも異数体育種の素材が存在することを示し、魚類においても異数体系統の育種が可能なことを強く示唆した。
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