ラビリンチュラ類は大型海藻や海産被子植物生物体の表面に生活しており、アマモ荒廃病の病原生物と考えられている。また珪藻や細菌細胞を細胞外で消化して生じた有機物を吸収によって摂取していると報告されている。本研究では、珪藻殺藻性を有するラビリンチュラ類の沿岸海域における分布、増殖挙動、分子分類について明らかにした。 沿岸海域に生息する大型海藻および海草を試料として、珪藻二重寒天平板上のプラーク(溶藻帯)形成微生物を分離した。拡大型のプラーク形成微生物としては、アメーバ類、ラビリンチュラ類、糸状細菌が大部分であった。ラビリンチュラ分離株は、珪藻二重寒天平板培地上ではプラークを形成したが、加熱死菌体平板培地上では半透明の薄膜状のコロニーとして増殖した。ラビリンチュラ分離株の増殖には、必ずしも生細胞が必要ではなく、加熱死菌体や動物の血清添加平板上でコロニー増殖し、生体成分中のリン脂質画分に増殖促進因子が含まれていることが分かった。さらにラビリンチュラ分離株の菌体脂肪酸組成としてDHA含量が高い(60-70%)ことが明らかになった。ラビリンチュラL95-1とL95-2株の18SrDNA塩基配列に基づく分子系統解析の結果、データベースに登録されているLabyrinthula sp.AN-1565と最も近縁(87%)であり、labyrinthulid phylogenetic groupに属していることが明らかとなった。
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