本研究の課題は、高齢者がどのような理由で中山間地域・過疎地域に居住し続けるのかを、アンケート調査を利用して明らかにすることであった。そのために3ヵ年をかけて中山間地域合計6箇所で調査を行った。場所は計画通り島根県3箇所(横田町・金城町・大和村)、鹿児島県(輝北町)、高知県(土佐町)、広島県(高宮町)各1箇所である。アンケート調査の対象となる65歳以上の高齢者から話を伺うことはなかなかに難しいことであった。全部で600件を対象とした調査で回答していただいたのは358件、比率にして59.60%で、かなりの回収率であった。30%を直接聞き取りで、70%を郵送で調査した。その結果からは、高齢者が中山間地域・過疎地域に住んでいるのは積極的に選択して住んでいるというよりも、長男であり、生まれ育った所であり、先祖伝来の土地・家・墓を守るためであるという理由からが多いようである。そしてそこに住んでいた結果良いと感じるのが「人間関係がいい」、「空気がいい」、「のんびりしている」、「緑が多い」、「景色がいい」というような田園のよさである。他方で、中央政府による地域政策の貧困さの結果でもある「病院(医療機関)が近いこと」、「買い物が便利なこと」が高齢者によって切望されている。この報告書では個々の地域の事情を考慮した検討、あるいは自治体自身によって行わた調査をも踏まえた検討を行なう事が出来なかった。それについては近々行う予定である。
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