研究概要 |
河川・内湾等浅水域の「水環境」が,各流動場の水理特性と底床境界面の物質代謝とにより形成される諸機構を,観測・実験に基づいて究明し,水質保全の対策を考究する。 大橋と藤原は,石手川の最下流約2Kmの砂礫河床A区間(10年度)と,その上流約3KmのB区間(11年度,日射計と風速風向計を追加)との両端に,6項目水質計を置き,現地観測(約1週間,24時間連続)を実施した。Aの上流端は,都市化流域支川の合流点(AU),Bがダム下流約8Km(BU)であり,Bの水質の方が良い。都市河川排水量は,AUでは,正午と0時頃に2ピークの都市型日サイクル波形と,1週間の周期性を持つ特徴が明らかとなった。これは水環境形成の基本特性である。BUはそれより不規則であった。水温形成は,AU,BU双方の昼間の積算日射量と,夜間の気温との各時差相関解析より,時差2時間の各昇降特性(寄与率:約0.9と0.8)の結果を得た。DO,EC,pH,ORP及び気象要素の各項目間の時差相関解析より,日周期の流達特性,DOの増加及ぴECの減少の傾向から,砂礫河床A区間の浄化能の性状が明らかとなった。B区間は降雨出水の影響が著しく追加観測を要する。 藤原と大橋は,診断モデルによって紀伊水道と伊勢湾の残差流構造を解析し,双方ともEstuary循環が基本となる地衡流的な流れであることを究明した。.人工海底構造物による湧昇流誘起の水理機構は,海域流速が変数の数値実験により解析可能なことを究明した。 戒能と大橋は,閉鎖性浅海域(北灘湾)における上記水質計による数日〜1月間の現地観測から,底泥直上の水質データと海象データに基づいて,水温躍層の形成・解消と水質形成との相互関係を明らかにし,解析シミュレーションを進めている。室内実験に基づくORPモデルの検討により,底質材の酸素消費量の測定に寄与する新たな知見を得た。
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