研究概要 |
本研究では,我が国寡雨地帯である瀬戸内地方に位置する諸流域および中米半乾燥地域(ホンデュラス共和国)に位置する流域で観測された諸水文データに基づき,流域蒸発散量の実態を明らかにするとともに,流域の植生・乾湿条件が流域蒸発散量に与える影響を検討した. まず,国内外における流域での降水量・流出量・可能蒸発量のデータを用い,水収支法によって各流域からの年蒸発散特性を検討した.その結果,いずれの流域にあっても年蒸発散比(実蒸発散量/可能蒸発量)が年降水量の大小に依存すること,また,植生が疎な流域ではその減少傾向が著しいことをグローバルに把握できた.そこで次に,ランドサットデータを用い正規化植生指標(NDVI)等を求めることによって,各流域の植生状況を定量的に評価した.その結果,森林に覆われた流域,山火事の影響を受けた流域,造成畑地流域などにおける植生の状況を的確に把握することができ,NDVI値と各流域の年蒸発散比の間にかなり高い相関関係の認められることが明らかとなった. 次に,このような蒸発散特性を考慮した蒸発散サブモデルを長期間流出モデルに導入し,流域水循環の立場からいくつかの流域における蒸発散特性を検討した.本モデルをいくつかの流域に適用したところ,良好な結果を得,流域の乾燥が蒸発散に与える影響を詳細に把握することができた. さらに、植物を用いたポット実験を行い,土壌水分と蒸発散の関係を検討した.その結果,蒸発散は可能蒸発強度と土壌水分の両者に依存すること.また,蒸散が減退し始める土壌水分範囲はpF2.5〜3.0であるのに対して,土壌面状初の減退開始の土壌水分範囲は,pF2.0付近であることが明らかとなった.
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