研究概要 |
実施した項目及び得られた知見は,以下の5点に取りまとめられる. 1.まず,兵庫県南部地震により被災した淡路島のため池を対象に,これまでに蓄積した現地調査結果と各種情報に対しGISを適用し,視覚的に被災原因の追及を試みた.その結果,活断層からの距離や表層地質,築堤地盤の勾配の及ぼす影響が比較的大きいことが確認できた. 2.次に,各ため池の量的データを主に用いた多変量解析により要因変数の抽出を行ったが,震源から離れた西淡町に被害ため池が偏在している原因については確たる知見は得られなかった.そこで,質的データを対象とした数量化理論II類により,被害の有無に影響を与える要因の分析を試みた. 3.室戸市周辺の高知県東部地方に分布する農業用ため池の台帳記載事項を整理するとともに,現地調査により補充・改訂した後,2より抽出された要因に基づき,同地方のため池118個の地震時危険性を診断した. 4.さらに,改修計画が挙がっている室戸市のため池3個をピックアップし,振動方向を様々に変化させたときの地震時動水圧を3次元境界要素法によりシミュレーション解析した.特に,近傍活断層及び南海トラフ上に震源を想定した場合を対象に,現行の動水圧算定法を用いることの妥当性に関し考察した. 5.また,2次元パラメトリック数値解析により,各種形状を有するため池モデルに対し,振動方向を変化させた場合の地震時動水圧を算定した.次に,その結果をペラメータ毎に整理し,全圧力値,その作用点位置と作用方向,全モーメント値を簡易に推定するためのノモグラムを作成した.これにより,現行の設計基準では対応し得ない広範なケースに対しても,精度良くかつ簡便に動水圧を推定することが可能となった.
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