研究概要 |
本研究の目的は、1.形態学的には種の識別が困難な双口吸虫卵を遺伝子DNAの塩基配列から識別が可能であるか否かを明らかにすること、2.識別法として、より簡便なPCR-linked RFLP法を確立することである。本年度は2.についての実験を行ない、次の結果を得た。3種類の双口吸虫、すなわち Calicophron calicophorum,Orthocoelium streptocoelium,Homalogaster paloniaeを用いてリボソームDNAのITS-2の塩基配列を決定し、配列の違いを調べた。ITS-2の塩基対数はC.calicophorumおよびO.streptocoeliumで284bp、H.paloniaeで285bpと種間による差異は低かった。また配列の違いについても、C.calicophorumとO.streptocoeliumの間で4.2%、H.paloniaeとO.streptocoeliumで4.6%、H.paloniaeとC.calicophorum5.3%といずれの値も低い値であった。これらの塩基配列に基づいて制限酵素地図を作成したところ、3種類の制限酵素、すなわち、AccII,MflIおよび HhaIの認識部位が3種の双口吸虫で異なっていた。実際に各種双口吸虫の単一虫卵から抽出したゲノムDNAを用いてPCR-RFLPを行ったところ、特に制限酵素AccIIの切断パターンから3種の虫卵は容易に識別することが可能であった。以上のことから、ITS-2領域のDNA塩基配列をマーカーとして利用したPCR-RFLPによって虫卵からの双口吸虫種の鑑別が可能であることが明らかとなった。
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