研究概要 |
神奈川県と埼玉県の7動物病院より採取した総計471検体の飼育猫血清のうち,43頭(9.1%)がBartonella henselaeに対し,41頭(8.7%)がToxoplasma gondiiに対する抗体を保有していた。B.henselaeに対する雄猫の抗体陽性率は12.9%と雌猫の5.2%に比べ有意に高い値を示した(p<0.01)。一方,T.gondii抗体陽性率は雄猫の9.1%,雌猫の8.7%で有意な差は見られなかった。さらに,わが国の飼育猫の7.2%(50/690)がBartonella属菌に感染しており(北海道0%〜沖縄20.0%),分離されたB.henselaeのほとんどがtype Iであった。また,日本の猫にもB.clarridgeiaeが分布しており,B.henselaeとの混合感染もあることが初めて明らかになった。これより,猫ひっかき病の病原巣である猫に対して,ワクチン開発などの予防対策が必要であると思われた。さらに,アメリカとわが国で分離されたB.henselae8株のゲノムDNAパターンと抗原性の関係を検討したところ,ゲノムパターンは全て異なっており,そのサイズは1.75〜2.13Mbpであることが明らかになった。株間のゲノムパターンと抗原性の関連性はみられなかったが,各株に抗原性の違いがあることが判明した。したがって,わが国に分布する株を用いた至適血清学的診断方法の開発が重要な課題であると思われた。
|