研究概要 |
サゴ澱粉生産の展開に際し解決しておかなければならない重要課題の一つに澱粉抽出残渣の有効利用法の開発がある.本研究はサゴ澱粉抽出残渣の飼料化を目的としている.排出されるサゴ澱粉抽出残渣は,1)水分含量70%以上,2)残存澱粉量が多い(30〜50%),3)窒素含量が極めて少ない(<0.5%),4)腐敗しやすいという性質がある.これらの性質をふまえて保存性を向上させ,不足する窒素源を補強し,かつ消化性の向上を計るために,残渣のアンモンニア処理,尿素を添加したサイレージ調製をガラス瓶法で行った.また,対照としてサイレージ調製も行った.さらに,残渣を培地とし糸状菌を培養することによるタンパク質付与が可能化どうか検討した. 1.アンモンニア処理:水分70%,アンモンニア添加量3%,温度25℃および30℃で処理し,6週まで経時的に取り出し,pH,アンモンニア含量,総窒素量,消化性,4-メチルイミダゾール(4-MI)量を定量した.結果は25℃および30℃処理区で大差なく,アンモンニアにより残渣の腐敗が防止された.残渣の消化性が向上した.また,残存澱粉量は15%減少したが,総窒素量が3.2%となり,残渣に不足する窒素の補強ができた.4-MIの生成量は1.3ppm以下で問題なかった. 2.サイレージ調製:水分70%,温度25℃および30℃で処理し,6週まで経時的に取り出し,pH,有機酸生成量,残存澱粉量,消化性を定量した.結果は25℃および30℃処理区で大差なく,1週目からpH4以下となり腐敗菌の増殖が押さえられた.生成された有機酸は乳酸が約7.5%と多く,酢酸や酪酸は1%程度であった.残存澱粉は約30%減少したが,良好なサイレージが得られた.消化性の向上は認められなかった. 3.尿素を添加したサイレージの調製:尿素添加量6%,尿素分解菌源(米糠または大豆植物体)0.5%,水分70%,温度30℃で処理した.尿素は2週までに含量2%程度にまで分解された.アンモンニアは約3%含まれるようになった.pHは初期に8.0まで上昇したがその後6.8まで下がった.澱粉含量は約25%低下した.消化性は向上しなかった.腐敗は認められなかった.この方法では初期のpH上昇が不十分で腐敗は認められなかったが期待に反しアンモンニア処理のような効果が得られなかった. 4)糸状菌培養:Chalara paradoxaおよびTrichoderma virideをツアペック培地で水分含量70%とした残渣で培養することを試みた.菌の増殖が悪く,総窒素の増加は認められなかった.
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