研究概要 |
in vivoにおける白血球と血管内皮細胞との相互作用を解析するために、白血球のかわりに人工細胞、リポソームを用いることを考案した。リポソームの内部に金属を封入し、その表面に内皮細胞に発現する抗原に対する抗体を付加した免疫リポソームを作成し、生体へ応用した。免疫リポソームはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、コレステロールからなり、径100nmに調整した。リポソーム表面に網内系から回避するためPEG(ポリエチレングリコール)をつけ内部にAu,Fe,Cuを入れた。Auは塊を作り、Feは分散化した。すべてのリポソームに入らず30%程度であった。さらに抗体としてICAM-1,VCAM-1を付加した。それらは100nmに30個前後つくことを形態学的に確認した。次にこれらの免疫リポソームを生体に投与した。アイソトープを入れた実験により、肝臓、リンパ節は特に取り込みが見られたため、今回はこれらの臓器に焦点を当て通常の透過電顕、走査電顕に加え反射電子法、エネルギーフィルターTEMを用いて調べた。肝臓においてはsieve plate周辺にリポソームが集まった。さらにその裏面につくものも見られ、さらに内皮に取り込まれるものも見られた。リンパ節においては、高内皮小静脈で内皮細胞の接着部位に集族した。内皮細胞内への取り込みは肝類洞ほど激しくはなかった。これらの結果から免疫リポソームはin vivoにおいて(1)細胞表面の抗原の挙動及び(2)細胞内取り込みによる細胞内情報が得られることがわかり、この人工細胞を細胞生物学的手法として用いることが有用であることが判明した。
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